歌姫　藤圭子

2013.8.31

私にとって彼女の歌は、聴こうとして真剣に聴く歌ではなかった。 だから私のコレクションの中に、彼女の歌はひとつもない。 しかしある時期、盛り場を酔った足取りで歩いているときに聞こえてくる歌の中で、彼女の歌が一番好きだった。 　夜咲くネオンは　嘘の花 　夜飛ぶ蝶々も　嘘の花 　嘘を肴に　酒をくみゃ 　夢は夜ひらく 盛り場には、嘘の話の中に嘘の花が咲き、だから楽しかった。 嘘から出た話が発展して、そこにひとつの物語が出来ることもある。 　誰が泣こうと　誰が笑おうと　ネオンの街は 　背中あわせの人ばかり あまりにも孤独で、あまりにも衝撃的な彼女の死。 昭和の歌姫は、ひとりでどこをさまようつもりなのか。